top of page
いずみ聡 公式サイト


~たしかな生き方~
教会という権威にではなく、教えそのものを大切にすべきだという、キリスト教の無教会主義だった内村鑑三が、箱根の山で仲間に語った記録「後世への最大遺物」を数日前に読み終えました。お金がある人は財産を残して後世に貢献すればよい。思想がある人は、思想を残して貢献すればよい。文才のある人は、本を書き残して貢献すればよい。では財産も思想も文才もない人は何を残せばいいのか。内村は「正義に、もとることなく一生懸命生きたことこそが、後世への最大の遺物」と結論します。 これを読んでいて瞬間的に私の脳裏に浮かんだことがありました。2年前に読んだ三浦綾子の「塩狩峠」の一節です。北海道で暴走する列車の車輪下に身を投げて停車させ多くの命を救った長野雅夫がモデルのこの小説に次のようなくだりがあります。 (主人公信夫の)父は遺言の中で「日常生活において、菊(妻)に言ったこと、信夫、待子に言ったこと、そして父が為したこと、すべてこれ遺言と思ってもらいたい。わたしは、そのようなつもりで、日々を生きてきたつもりである…」…それは常に死を覚悟して生きて来た姿とは言えないだろうか。…
聡 和泉
6月28日読了時間: 2分


~第二の矢~
生きていると、楽しいこともあれば、苦しいこともありますが、どちらかというと、苦しみを感じることの方が多いのだと思います。なぜか。最近、禅や仏教の本を読んでいて、教わることがありました。少し冷静になって人間の心の動きを観察してみる。例えば、楽しみにしていた旅行の前日に、足をくじいてねん挫し、旅行に行けなくなったとします。私はなんて不運なんだと思う。旅行に行っていれば、きっといい景色を見て、いい空気を吸って、美味しいものを食べられたのに。こうした心の動きを顧みる時、足をくじいたことを「第一の矢」とすると、いい景色を見られたはずなのに、美味しいものを食べられたはずなのに、と思うことが「第二の矢」です。人間を苦しめるのは、実は「足をくじいた」という事実そのもの、つまり「第一の矢」よりも、自分はあれもこれもできずに損をしたと分析したり比較したりする「第二の矢」の方なのではないのか。だから第一の矢が来たら「できるだけ早く治そう」とだけ思い、あれもこれもできなかったから不運だという「第二の矢」が来ないように心がける。なぜならこの「第二の矢」こそが、人を苦しめて
聡 和泉
6月28日読了時間: 2分


~同じ心の国籍~
本を読んでいると、様々な言葉に出会います。私は「ああ、これはいい言葉だなあ」と心に刺さったとき、携帯のメモアプリにその言葉を書きつけ、電車の中や仕事の合間など、ことあるごとに読み返しています。気持ちが落ち込んだときや、心に迷いがあるとき、これを読み返すと、不思議と心が落ち着きます。 最近出会った言葉で、読んだ瞬間に大好きになったのは次の一節です。 私は、いつの頃からか、世間には、同じ言葉で話せる人間と、それの通じない人間のあることがわかってきました。それは、心の国籍のようなものです。……同じ国籍の者同士は、たとえ、初めてあっても、相手の心の中に、自分と同じ故郷の山河をもっていることが、わかるのではないでしょうか。(ブッシュ孝子全詩集「暗やみの中で一人枕ぬらす夜は」新泉社) ブッシュ孝子は、児童心理学を学び、がんで闘病中にドイツ人青年と結婚、1974年に28歳で亡くなりました。その直前の5か月間にノートに書き記したことばが詩集になり、略年譜に彼女の言葉として紹介されている一節です。同じ日本語を話しているのに「同じ言葉で話していない」と思ってし
聡 和泉
6月28日読了時間: 2分


~続・至誠通天~
市長を退任してから、4年6カ月。新たな仕事や人々との出会いのなか、いつも心の一番の奥底で考え 込む自分がいました。市長時代の数倍の本を読む。小説家や歴史家、批評家、著述家の文章を読みなが ら、それを書いた人たちの肉声を耳にする。そうして朝、目が覚めると、「昨日より今日、また一歩、自 分は自分の終わりに向かって歩みを進めた」という当たり前のことを思うようになりました。自分も、自 分の愛する人も、尊敬する人も、日々そうした歩みはみな同じく平等に訪れている。であればなぜもっと 謙虚になれないのか。そんなことを考えるうち、ずっと、ためらっていた「書くということ」をせねば、 と思い立ちました。随筆家の若松英輔は「うまく書こうとしてはならない。人は、うまく生きたいとおも ってもそうは生きられない……これが自分が書く最後の文章だと思って書くことだ」(「生きていくうえで かけがえのないこと」)と書きました。できるだけ、何も足さず、何も引かず、書いていこうと思いま す。不定期に。長さもまちまちで。 ※ ※ ※ ※ ※ ※ 縁あって、最近、ある福祉関係法人の仕事を
聡 和泉
6月28日読了時間: 3分
bottom of page